ばーちゃんの話

うちのばーちゃんは俺が大学生の時に亡くなったんだけど、ほんとヒステリックな人だった。急に感情むき出しにして泣きだしたりしてたんだ。嫁(俺のかーさん)いびりもけっこうあった。いっかい、それが原因でかーさんが家出しそうになって、その時俺はまだ小学校の低学年ぐらいだったんで、すごく不安になり、家を飛び出したかーさんを追っかけて捕まえて、泣いて引き留めたおぼえがある。かーさんは「ありがとうね」と言った。嫁姑の仲はだいぶ悪かったように思う。


ばーちゃんは、何か気に入らないことがあると、すぐに自分の身の不遇を嘆き、よく聞き取れない呪詛の言葉を放っては泣いていた。言ってる途中で自分がかわいそうになって泣いてる感じだった。おれはそれを見るたびに、ああまたはじまったとか思っていた。よく引っ掻かれたりもした。泣きながら、もしくは怒りながら攻撃してくるのだ。あの時俺はどういうリアクションをしていたんだっけ。忘れてるな。ただ、笑いながら引っ掻いてくることもたまにあって(おもにこたつの中で足を)、「オメ、どうだ、最近」みたいな感じだったような気がするが、そういう時は俺はすごくムカついていたと思う。


ばーちゃんとの思い出はほとんどなくて、どこかに一緒に旅行にいった覚えもないし、楽しいこともなかった。ただ覚えてるのは、ばーちゃんは掃除をする時に、「しーーーー、しーーーー」と言いながら掃除をしていたな、ということ。おもに拭き掃除の時だ。ぞうきんで床を拭いてる時など。それが何か強烈に印象に残っている。あと、風呂に入っていて、体を洗う時もこの「しーーーー」があった。小さい時に一緒に風呂に入っていて、俺のからだを洗ってくれる時も「しーーーー」って言っていた。


ばーちゃんが亡くなった時、俺のねーちゃんは「ばーちゃん冷たくなってらよ」といって泣いてたけど、俺はなぜか全然悲しくなかった。なんでだろう?


命日でもないのに思い出したので、書いてみた。